第4話 ピュグマリオン一族の歪んだ愛

キプロス島の王ピュグマリオンは、理想の女性をイメージして彫像を作り、ガラテアと名付け、人間の女のように愛を注ぎました。

ピュグマリオンが愛の女神アフロディーテに「ガラテアのような女を妻にください」と願うと、アフロディーテは、彫像ガラテアに命を与え人間の女へと変えました。

ピュグマリオンとガラテアの間にはパポスという女の子が生まれました。今でもキプロスには同名の町があります。

彫像に無限の愛を注いだピュグマリオンの歪んだ愛は続きます。今度は娘パポスと交わったのです。

パポスはキニュラスという男の子を生みました。キニュラスは、ピュグマリオンの息子ですが、娘が産んだ子どもでもあるので、ピュグマリオンの孫でもあります。

キニュラスはピュグマリオンの後を継いで王となりました。キプロス島を統治し、美人の娘も生まれました。すべて上手くいっていましたが、娘が結婚しようとしないことが気がかりでした。

キニュラスには妻がいましたが、キニュラスと交わりたいという女がいて、このところ毎晩来ていました。

立場上姿を見せられないと言うので、部屋を真っ暗にして交わっていました。

キニュラスが、今日こそは正体を確かめようと思って、明かりをつけてみると、それはキニュラスの娘でした。

キニュラスの娘は、アフロディーテに敬意を持たなかったため、アフロディーテに呪いをかけられたのです。間違った相手に対する恋愛感情や性欲を吹き込んで破滅させるのは、アフロディーテがよく使う手です。

近親相姦は重罪だったため、キニュラスの娘は逃走しました。しかもあろうことか妊娠していました。月が満ちて男の子が生まれ、アドニスと名付けられました。

この一族には、彫像を愛したピュグマリオンの歪んだ愛の血が流れています。

アドニスも物体を愛したり近親相姦をしたりするのでしょうか。

アドニスが少年になった頃、アフロディーテは、かわいい少年だなあと思ってアドニスを眺めていました。

その時、アフロディーテの息子エロスは、誤ってアフロディーテに矢を当ててしまいました。

エロスの矢に触れると、意中の相手を理性では制御できないほど好きになります。アドニスは、少年であるにも関わらず、アフロディーテから愛されるようになりました。

アドニスは狩猟が趣味でした。

アフロディーテは、くれぐれも猛獣に気を付けるように言っていました。

しかしアドニスは猪に突進されて殺されてしまいました。

これは性愛の女神アフロディーテと敵対する処女神アルテミスの仕業でした。嫉妬した夫アレスが猪に変身して突進したという伝承もあります。

アフロディーテは、アドニスを生き返らせてほしいと冥界の王ハデスに頼みました。

ハデスは、死んだ人間を生き返らせることはできないが、花にして地上に返すぐらいならできると言いました。

こうしてアドニスはアネモネという花になりました。

「風」はギリシャ語で「アネモス」です。アネモネの花は、風が吹くとすぐに散ってしまいます。

アフロディーテがアドニスと過ごせた時間が短かったことを象徴しています。

思い込みの力によって彫像を妻にしたピュグマリオン。 ピュグマリオンから続く歪んだ愛の歴史は、最後は花になって終わりました。

ルーベンス「ヴィーナスとアドニス」17世紀
アドニス「狩りに行ってくるよ」 アフロディーテ「行かないで!」

第5話 王様の耳はロバの耳 黄金の呪い編

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