牛の取り分、火の奪還、と立て続けにゼウスに反抗したプロメテウスには罰が与えられました。
プロメテウスは、ギリシャから遠く離れた、今のコーカサス山脈まで連れていかれ、柱に縛り付けられました。そして、身動きができない状態で、肝臓を鷲に食べられるという恐ろしい刑に処せられました。
プロメテウスも神であり不死なので、刑は永遠に続きます。
夜になると鷲が眠り、夜の間に肝臓が元通りになり、翌朝になるとまた食べられます。
しかし未来が見えるプロメテウスは知っていました。
弓矢を持ったヘラクレスが現れて鷲を射殺してくれることを。
やがてヘラクレスが来て鷲を射殺し、プロメテウスは神々の世界へ戻りました。(「プロ」は「プロローグ」の「プロ」「先に」、「メテウス」は「考える人」を意味する)
こんな伝承もあります。
ゼウス:「どうだ?来る日も来る日も鷲に肝臓を食われるくるしみは?」
プロメテウス:「ふん。お前が好き勝手やるのを黙って見ているよりはマシだ。」
ゼウス:「威勢がいいな。あと1万年ぐらいこのままにしておいてやろうか?」
プロメテウス:「お前のような独裁者に従うぐらいなら、私は喜んで永遠に地獄の中にとどまろう。しかし、本当にいいのか?」
ゼウス:「何がだ?」
プロメテウス:「私がこの世界の存続に関わる重大な秘密を知っている、と言ったらどうする?」
ゼウス:「何を言い出すかと思えば…ハッタリか。」
プロメテウス:「ハッタリじゃないさ。私には未来が見えるのだ。お前の未来の息子がもたらすであろう破滅もな。」
ゼウス:「私の未来の息子?」
プロメテウス:「覚えているだろう?我々の祖先ウラノスは、実の息子クロノスに敗れ、クロノスもまた予言通りに実の息子、すなわちお前の手にかかって倒れた…」
ゼウス:「私が自分の息子に滅ぼされると言うのか?」
プロメテウスが知っていた世界の存続に関わる秘密とは、「女神テティスは必ず父より強い子を産む」という予言でした。ゼウスはテティスを狙っていたのですが、もしゼウスがテティスと交わって子どもが生まれたら、その子どもはゼウスよりも強くなります。政権交代、下手をすればこの世界を滅亡させる可能性さえありました。
この情報を教えることを条件に、ゼウスはプロメテウスを解放しました。
そして、もうゼウスに反抗しないことを約束させ、約束を忘れないように指輪をはめさせました。これが指輪の始まりと言われます。
こちらの伝承の方がプロメテウスの見せ場がありますね。