第4話 ヴィーナスの誕生

アフロディーテの誕生秘話は、ギリシャ神話らしい神聖なエピソードでした。

ゼウスが世界の王になる前の時代に、支配者の地位にいたのは、ゼウスの祖父にあたる天空の神ウラノスでした。

ウラノスの妻である大地の女神ガイアは、息子クロノスに巨大な鎌を持たせ、ウラノスがガイアと交わって油断しているすきを狙ってクロノスはウラノスのいちもつを鎌で切り落とし、海へ投げ捨てました。

天から降ってきて海に着水したウラノスのいちもつからは泡が吹き出し、アフロディーテが生まれました。「アフロディーテ」とは「泡から誕生した女」という意味です。

泡に包まれて保護されたアフロディーテはエーゲ海を東へ漂流し、キプロス島に漂着しました。

この場面を描いた「ヴィーナスの誕生」という絵画があります。

1485年頃 サンドロ・ボッティチェッリ ヴィーナスの誕生

神話画のパイオニアとなった有名な絵画です。イタリアンのサイゼリヤにもあります。

ヴィーナスはアフロディーテの別名です。「ミロのヴィーナス」のヴィーナスもアフロディーテです。

左上にいる風をまとった男は、西風の神ゼピュロスです。よく見ると、ほほを膨らませてピューっと風を吹いています。こいつがギリシャから東へ向かって風を吹かせて、泡に包まれたアフロディーテをキプロスまで運びました。

同じ場面を別の画家も描いています。

1879年 William Adolphe Bouguereau
1875年 Alexandre Cabanel

◆美と「愛」の女神の真意

アフロディーテは美と愛の女神ですが、愛と言ってもギリシャ神話では少々事情が異なります。

ウラノスのいちもつから生まれたことが象徴するように、アフロディーテが司る愛は純愛と言うより性愛が主です。

アフロディーテは、気に入らない人間や神に対しては、倫理的に問題のある恋愛をして破滅するように仕向けます。

キプロスでは古来よりアフロディーテ信仰が盛んでしたが、アフロディーテに敬意を払わなかった娘が、アフロディーテの呪いによって実の父親と交わり、国から逃亡したという神話が残されています。

恋愛感情や性欲を吹き込むことで人間を操り、破滅する過程をNetflixのように娯楽として眺めて楽しむこともあります。

息子「エロス(英語名はキューピッド)」を遣わせて人間を惑わせることもあります。

ただし、たまに純愛っぽい話もあります。ディズニー映画の名作「美女と野獣」はエロスとプシュケの神話に着想を得ており、この神話の中でアフロディーテを通じて愛がまじめに語られます。

第5話 美の女神

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