有名なギリシャ最強の英雄「ヘラクレス」の誕生の秘密を探ってみましょう。
と言っても、つまるところはゼウスの浮気です。
ゼウスは、オリュンポスの館から人間界を眺めていて、アルクメネという女と交わりたくなりました。
しかしアルクメネは貞操が固い女性でした。婚約者がいましたが、婚約者以外の男とは交わらず、それどころか婚約者とも交わったことがない処女でした。アルクメネの攻略は困難を極めました。
やがてゼウスにチャンスが到来しました。アルクメネの婚約者が戦に出かけ、しばらくの間留守にしたのです。戦の間、ゼウスは戦の様子や婚約者の行動を注意深く観察しました。
そしてゼウスはアルクメネの家へ向かい、婚約者に化け、戦の状況を語り、婚約者の振りをしながらアルクメネと交わりました。
とても神とは思えない変身術の活用でした。ゼウスは変身して警戒を解きターゲットに近づきます。牛に化けたり白鳥に化けたり黄金の雨になったりと様々ですが、婚約者(夫とする伝承もある)に化ければ確かに成功率は高いでしょう。怪盗ルパンも怪盗キッドも驚くでしょう。
◆ヘラクレスはペルセウスの子孫
アルクメネはゼウスの子ヘラクレスを身ごもりました。
その頃、神々の世界のオリュンポスの館では、ゼウスの正妻ヘラが激怒し復讐の機会をうかがっていました。
ヘラクレスが生まれる日になると、ゼウスは「今日生まれるペルセウスの子孫はミュケーネ(古代ギリシャの都市)の王になる」と言いました。アルクメネは英雄ペルセウスの孫だったので、ヘラクレスが王になるという趣旨の宣言でした。
するとヘラは「その言葉、ステュクスの川にかけて誓いなさい」と言いました。ゼウスが誓った後、ヘラはアルクメネの出産を一旦停止し、ペルセウスの子孫である別の女に出産させました。ヘラの娘でありお産を司るエイレイテュイアという女神に言いつけて、生まれる順番を操作したのです。そして神々の掟により、ステュクスの川にかけて誓ったことは必ず守らなければなりません。
こうしてヘラクレスは王の座を逃し、ヘラが用意したミュケーネの王に仕える運命となりました。 この辺りからヘラの復讐が始まります。ギリシャ語で「ヘラの栄光」を意味する「ヘラクレス」という名の通り、ヘラが反撃します。ヘラは結婚と妻の地位を守る女神なので、浮気にはしっかりと復讐します。