第5話 月の女神とオリオン座

アクタイオンという漁師は、森で狩りをしていたら、水浴びをしていた狩猟の女神アルテミスに偶然遭遇し裸を見てしまいました。アルテミスはアクタイオンを鹿に変え、アクタイオンが連れていた50匹の猟犬に襲わせました。

神々は、基本的に人間に対してひどい扱いをします。古代ギリシャ人から見た神々とは、人間の世界に被害をもたらし、かつ人間の手でコントロールできない、自然災害のような側面を持つ存在でした。

神々は、人間に対してだけでなく、神同士でも争いやだまし合いを繰り返します。

アルテミスがクレタ島で狩りをしていた時、オリオンという勇者が島にやってきました。

アルテミスが観察していると、オリオンの狩猟の腕はなかなかのものでした。

アルテミス:「あなた、なかなかお上手ですね。いっしょに狩りをして腕比べをしませんか?」

オリオン:「女神アルテミス様には敵いません。しかし、あなたの弓の腕前はぜひ見てみたいものです。」

アルテミスはオリオンが気に入り、狩りの約束をしました。男ぎらいのアルテミスにしては珍しいことです。

アポロンは、アルテミスとオリオンの戯れを阻止することにしました。

約束の日は満月でした。月明かりの夜、アポロンは、ゾウよりも大きい巨大な毒サソリを出現させて、オリオンを襲わせました。

オリオンは毒サソリを剣で切り付けましたが、甲羅が固くて攻撃が効きません。海へ飛び込み、泳いで逃げつつ武器を調達しにいきました。

オリオンがかなり陸地から離れたところで、アポロンはアルテミスをそそのかしました。

アポロン:「アルテミスよ、海のあの辺りで何かが泳いでいるのが見えるか?」

アルテミス:「ええ。あれがどうかした?」

アポロン:「あれはこの辺りを荒らしている怪物だ。お前の神殿の巫女も被害にあっている。殺した方がいい。しかし、弓の名人のお前でも、あんな遠くの的は射抜けないだろう。」

アルテミス:「私は弓矢の女神アルテミスだ。どれほど遠くの獲物でも確実に仕留めてみせよう。」

弓矢の女神の狙いは正確無比。アルテミスの放った矢は海上の暗闇を駆け、標的の頭をまっすぐに貫いた。やっと出会えたお気に入りの男、オリオンだとは知らずに…

怪しい月光の照らす下で、光明の神アポロンは邪悪にほくそ笑んだ。

翌朝、アルテミスは、浜辺に打ち上げられたオリオンの死体を見つけて愕然とした。そして昨夜自分が射抜いたのがオリオンだったことを悟った。どんなに嘆き悲しんでも、死んだ人間は戻って来ない。せめてもの願いとして、アルテミスはゼウスに頼みオリオンを星座にしてもらった。

この神話で、星座のオリオン座とサソリ座がつながります。

オリオン座は、一年中サソリ座に追いかけられています。毎晩、東の空にサソリ座が現れると、オリオン座は西の地平線に沈み、サソリ座が西の地平線に沈んでいなくなると、オリオン座は東の空から上がってきます。この鬼ごっこのようなサイクルを終わることなく繰り返します。そして月すなわちアルテミスはオリオン座に会いに行きます。

ギリシャ神話のストーリーを投影した星座の話はなかなかシャレています。古代ギリシャ人は、神話の物語に合うように、星座の位置や形を想定しました。オリオン座とサソリ座の他、大熊座と子熊座、ペルセウス座・アンドロメダ座・カシオペア座などもギリシャ神話が起源です。

タイトルとURLをコピーしました