アポロンは好色で短気。そして同性愛者でもありました。
これは、古代ギリシャでは同性愛、特に中年男性と少年の同性愛が普通だったことを反映しています。
ギリシャのスパルタという地方に、美少年で有名なヒュアキントスという少年がいました。
アポロンはヒュアキントスと知り合い、この少年を愛し、両想いとなりました。つまりヒュアキントスも同性愛者だったわけです。
ある日、二人は円盤投げデートを楽しんでいました。
ヒュアキントスはアポロンの方へ力いっぱい振りかぶって円盤を投げました。
ヒュアキントスの男らしい筋肉の盛り上がりやダイナミックな動きにアポロンは歓喜しました。
この円盤投げデートを西風の神ゼピュロス(「そよ風」を英語で「ゼファー」と言います)が見ていました。
ゼピュロスはアポロンに嫉妬しました。アポロンに嫉妬したということは、つまりゼピュロスもヒュアキントスが好きで、同性愛者だったということになります。
嫉妬心でいっぱいになったゼピュロスは、嫉妬を込めてほほを膨らまして、アポロンが投げた円盤にピューっと息を吹きかけて、円盤の飛ぶ方向を変えました。
すると円盤はものすごいスピードでヒュアキントスの頭部をめがけて飛んでいき、命中しました。即死でした。
手に入らないなら、他人に取られてしまうぐらいなら、殺してしまう。嫉妬深い人間の心理です。
アポロンはヒュアキントスに駆け寄りましたが、時既に遅し。ヒュアキントスの頭からはまだ温かい血が流れていました。
自分の投げた円盤で死なせてしまったことをアポロンは深く哀しみました。
人間は神と違って死んだらもう戻ってきません。
しかしせめて花にしてあげたいと思い、アポロンは大地に染み込んだヒュアキントスの血から美しい花を咲かせました。
この花はヒヤシンスと呼ばれるようになりました。