第2話 エジプトまで逃げたイオ

愛人イオと交わっていたゼウスは、正妻ヘラの殺気を感じ、浮気現場を押さえられる寸前でイオを牛に変身させました。しかし、イオは、牛の姿のまま、ヘラが用意した百眼の怪物アルゴスに監視され、逃げ出すことができませんでした。

ゼウスはイオを助けに行きたいところですが、自分が行くとまた揉めるので、息子のヘルメスを遣わしました。ヘルメスは魔法の杖でアルゴスを眠らせて退治し、イオを救出しました。

ヘラはこの程度では引き下がらず、イオを牛の姿にしたまま、アブを送って刺し続け、更なる追い打ちをかけました。

イオは、アブに刺されながら走って逃げました。ギリシャ本土を西海岸に沿って北上し、バルカン山脈に突き当たって進路を東へ変更し、ボスポラス海峡を渡ってトルコまで行きました。

この間、ゼウスは浮気を認めヘラに謝り倒していましたが、ヘラの怒りは収まりませんでした。

イオがエジプトまで逃げたところで、やっとヘラがゼウスを許し、イオは解放され人間の姿に戻りました。

その後、イオはナイル川の川辺でゼウスの子を産み、エジプトの王と結婚しました。

イオの神話にちなんで、ギリシャの西の海は「イオニア海」と名付けられました。

ボスポラス海峡の「ボスポラス」とは「牝牛が通る道」といった意味です。

ギリシャ神話の影響力はギリシャ国内にとどまらず、トルコやエジプトにまで足跡を残しています。

さらに、宇宙空間にも、「イオ」や「ジュピター(木星。ゼウスのラテン語名ユピテルの英語読み)」という惑星があります。木星は太陽系で最も大きい惑星であり、木星の衛星には「イオ」「エウロペ」「メティス」「レダ」などゼウスの愛人の名前が付けられています。

また、ヘルメスは、イオのエピソードのように、ゼウスの浮気の後始末をするために神々の世界と人間界を飛び回ります。ヘルメスのラテン語名前は「マーキュリー」で、水星も「マーキュリー」です。水星は太陽系の惑星で最も速く動くためです。なかなかシャレが効いていますよね。

第3話 エウロペと白い牛

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