ギリシャ神話では、神託(神が述べる予言)が話の発端になることがよくあります。
ペルセウスの物語も神託から始まります。
昔、ギリシャの都の王様は、次のような神託を聴きました。
「お前は娘が産む子どもに滅ぼされる運命にある」
王様は、「娘が子どもを産まなければよいのだ」と考え、青銅の高い塔を建て、一人娘のダナエを塔の最上階に監禁しました。塔は脱走できないように設計されており、人間が通れる大きさの窓もありませんでした。あるのは、日光を取り入れるための小窓だけでした。
ゼウスは人間界を眺めていて、ダナエが気に入りました。しかし、ダナエがいる塔の最上階には、ゼウスが入れる大きさの入り口はありません。
そこでゼウスは黄金の雨になり、ダナエの塔の小窓へ向かいました。
きれいな雨だな、と思ってダナエが小窓を眺めていると、黄金の雨はダナエの膝に降り注ぎ、やがて交わりが始まりました。
赤ん坊が産まれると、王様は産声で赤ん坊が産まれたことに気づきました。
いったい誰がどうやってダナエのいる最上階に入ったのか全く分かりませんでした。ましてや、神が黄金の雨となって人間界に降り注ぎ小窓から侵入したとは想像もつきませんでした。しかし現にダナエは子どもを産んでしまいました。
予言の実現を恐れた王様は、ダナエと赤ん坊を木箱に入れてエーゲ海の大海原へ流しました。
この赤ん坊が英雄ペルセウスです。
ギリシャ神話の英雄の多くは、ペルセウスのように、片方の親が神でもう片方の親が人間の「半神」という生物です。神と人間のハーフです。たいていの場合は、ゼウスが人間の女をはらませることで誕生します。
なお、西洋の文芸作品では、英雄が幼少期に漂流する話が時々あります。有名なアメリカのSF映画「スターウォーズ」もその一つです。このようなシナリオの源流は、ギリシャ神話のペルセウスに辿り着きます。