第7話 シシュポスは死神を欺く

シシュポスは非常に賢い男でした。

ニュアンスとしては「ずる賢い」という言葉の方がぴったりかもしれません。

シシュポスは、古代ギリシャにおいてアテナイ(現在のアテネ)やスパルタに匹敵したコリントスという都市の創設者です。

同じく知恵者のオデュッセウスの父親だという伝承もあります。(オデュッセウスは、素晴らしい発想力によってトロイア戦争で活躍し、オデュッセウスの冒険「オデュッセイア」は「スターウォーズ」「風の谷のナウシカ」など数々の有名作品の元ネタとなりました。)

ある日、河の神がシシュポスを訪ねてきました。

河の神:「お前は誘拐の常習犯らしいな。何人もの娘を連れ去った前科があるそうじゃないか。私の娘も誘拐したのか?」

シシュポス:「私ではない。だが誰の仕業かは知っている。」

河の神:「誰だ!教えろ!」

シシュポス:「いま私が都を建設している土地に、水の枯れない泉を湧き出させたら教えてやろう。」

河の神が木の棒で地面を叩くと、立派な泉が湧き出しました。

シシュポスは、誘拐犯がゼウスであることと、ゼウスの居場所を教えました。

河の神は、娘とゼウスがいる森へ向かいました。

この時、ゼウスは武器の稲妻を置いて休憩していました。

ゼウスは、河の神の気配に気づき、丸い岩に変身して隠れました。

その後、情報を垂れ流した罪でシシュポスを罰するよう冥界の王ハデスに頼みました。

ハデスは、タナトスという死神をシシュポスの家へ送りました。

タナトス:「ゼウスの浮気をばらした罪だ。お前をタルタロス(冥界)へ連れていく。」

シシュポス:「断る。人間を冥界へ連れて行くのはヘルメスのはずだ。あなたに連れていかれる理由はありません。その、手に持っているのは何ですか?」

タナトス:「手錠だ。」

シシュポス:「手錠、ですか。初めて聞きました。どうやって使うんですか?」

タナトスが自分の手に手錠をかけたところで、シシュポスは手錠に鍵をかけました。

シシュポス:「なるほど、こうやって使うんですか。これは便利ですね!さすがは冥界の神様だ。」

感心したように言うと、シシュポスはタナトスを庭の木に鎖でつなぎました。

タナトスが間抜けとも思えますが、シシュポスのずる賢さを示すエピソードです。

シシュポスは、まずは河の神に情報を売ることで、泉という利益を得ました。その結果タルタロスへ連れていかれそうになりますが、死神を騙して切り抜けます。この後も神々を欺きます。ゼウスやアテナやポセイドンほど知名度は高くありませんが、おもしろいエピソードがいくつもあります。

死神を騙して利用する「デスノート」の主人公を彷彿させる、と思うのは管理人だけでしょうか?

第8話 シシュポスは神々を手玉に取る

タイトルとURLをコピーしました