第2話 水仙の花には毒がある

冥界の王ハデスは、水仙の花でおびき寄せてペルセフォネを誘拐しました。

水仙の花にもいろいろな種類があるらしいですが、ハデスがペルセフォネの誘拐に使った水仙は毒のある花で、ストーリーに符号します。水仙(スイセン)の学名はナルシッサスですが、その由来は「ナルケー(ギリシャ語で「麻痺させる」「眠らせる」)」です。

そしてナルシストの語源となったのも、ギリシャ神話のナルキッソスという青年です。ナルキッソスは湖の水面に映る自分の顔を食事も忘れて眺め続けました。その様子は近くに咲く水仙の花が頭を垂れる様子に似ており、その自己愛は女神アルテミスがかけた呪いでした。

愛娘ペルセフォネを誘拐されたデメテルは激怒し、世界中の農作物が育たなくなる呪いをかけました。人類も神々も滅ぼしかけました。

デメテルは、普段は優しいが怒ると恐い女性として描かれていることがあります。そして、デメテルが登場するエピソードを読むと、人間に対しても神々に対しても大きな影響力を持っていることがわかります。オリュンポス12神にも入っています。

デメテルの影響力の強さは、当時の時代背景を示しています。ギリシャ神話が作られた時代には、現代のように人間が思い通りに農作物の収穫量を増やすことができませんでした。化学肥料で成長を早めたり、温室を使って夏の野菜を冬に栽培したりはできません。作物が育つか育たないかは自然が決めることであり、神の意志によるという発想がありました。デメテルの気分は人類にとって一大事だったのです。

右が激怒するデメテル、左がゼウス 1777 Antoine Francois Callet

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