ポセイドンは海の神です。
オリュンポスの神々の中で、ゼウスに次ぐ力を持っています。
これは、ゼウスとヘラの夫婦関係や、豊作の女神デメテルの信仰と同様で、ギリシャ神話が形成された時期のギリシャ人の生活を反映しています。
当時は今ほど航海の技術が発達していなかったため、船が難破するのは珍しくなく、嵐や津波の発生も予測できませんでした。そのため、海に対する不安と恐怖は今よりずっと大きかったのです。
ポセイドンの子どもが怪物だったり、怪物メデューサが愛人だったりするのも、海への恐怖が反映された結果と考えることができます。
しかし、強大な力を持つポセイドンですが、ポセイドンを主役としたエピソードは多くありません。
他の登場人物のエピソードで海の話になった時に、待ってましたとばかりに出てきます。
・アンドロメダを救うペルセウス
北の星座「アンドロメダ座」のアンドロメダです。
アンドロメダの母カシオペアが、「私は海の女神たちより美しい」と自慢したことにポセイドンが怒り、アンドロメダを海上の岩に縛り付け、海の怪物に襲わせます。そこに英雄ペルセウスが通りかかります。
・漂流するオデュッセウス
オデュッセウスは10年間も漂流しましたが、これはポセイドンの息子を倒したことでポセイドンに呪いをかけられたからです。この冒険の中で出会う登場人物は、「風の谷のナウシカ」「千と千尋の神隠し」「ハリー・ポッター」などのキャラクターや、HONDAの乗用車「オデッセイ」など、数々の有名作品等の元ネタとなります。
・馬になったデメテル
デメテルが行方不明の娘ペルセフォネを探して地上を歩いている時、ポセイドンはデメテルと交わろうとしました。
デメテルは、ポセイドンが彼女に欲情して追ってきていることに気付き、馬に化けて馬の群れに紛れ込みました。しかしポセイドンも負けじと馬に化けて追っていき、互いに馬の姿のまま交わりました。馬の姿で交わったため、生まれた子どもも馬でした。古代ギリシャ人にとっては神聖な神話かもしれませんし、現代人にとってはギャグかもしれません。
この馬は「アレイオン」という名前で、ギリシャ神話終盤の「トロイア戦争」で戦士の命を救いますので、ポセイドンとデメテルの馬の交わりは無駄ではなかったと言えます。「アレイオン」は馬のキャラクター名や乗り物の名前で時々使われます。
また、ポセイドンのエピソードには馬がよく出てきますが、これは古代ギリシャ人が海に立つさざ波を馬のたてがみに見立てたからだと言われています。翼のある馬「ペガサス」もポセイドンの血を引いています。