ゼウスは、妻ヘラと交わることなく、自分の頭からアテナを誕生させました。
ヘラも対抗して、夫ゼウスの力を借りずに自分の力だけでヘパイストスという子どもを産みました。
しかし、ヘラが独力で産んだヘパイストスは、容姿が醜い上に、足が不自由でした。
ヘラは、醜い子どもを産んでしまったという現実を受け入れられませんでした。
ヘラは美意識が高かったのです。ヘラの聖獣は牛ですが、ヘラ本人は牛の鈍く重いイメージをきらってクジャクを代用していたほどです。
ヘラはヘパイストスをオリュンポス山の頂上から投げ捨てました。
ヘパイストスは、世界の果ての海に着水し、ここで二人の水の女神に拾われて育ちました。
ギリシャ神話に登場する神々はみな美男美女でしたが、唯一ヘパイストスだけが醜い容姿を持って生まれました。ヘパイストスは鍛冶の神でもあったのですが、ヘパイストスだけが醜いという設定は、古代ギリシャの都市では鍛冶屋の地位が低かったという事情を反映していると考えられています。足が不自由という設定も、鍛治で発生する有毒な化学物質による中毒です。
しかし腕の良い鍛冶屋や技術者は重宝されたでしょうし、腕を上げて成り上がった技術者がいたのかもしれません。
成長したヘパイストスは、神々の中で一番の技術を身につけ、どんな物でも作れる技術の神となりました。そして自分を投げ捨てた母親ヘラへの復讐を始めます。