第3話 子どもを飲みこむクロノス

大地の女神ガイアの聡明な(?)策略によって、クロノスは天空の神ウラノスを倒し、世界の支配者の座につきました。(※クロノスはガイアとウラノスの息子)

独裁者だったウラノスがいなくなり、クロノスと11人の兄弟姉妹はのびのびと活動を始めました。この時期に神の数が増えていきました。

クロノスは姉のレアと結婚し、6人の子どもが生まれました。

この程度の近親相姦は、ギリシャ神話の世界では普通です。

それよりも重要なことは、レアが子どもを産む度に、クロノスが子どもたちを一人残らず飲み込んでいったことです。

こちらの絵画をご覧ください。

我が子を食らうサトゥルヌス(フランシスコ・デ・ゴヤ 1823年)

これは「我が子を食らうサトゥルヌス」という絵画です。「サトゥルヌス」はクロノスのラテン語名です(英語では「サターン」)。題名では「食らう」となっていて、見ての通り食べてしまっていますが、神話では飲み込んだだけです。子どもたちも神なのでクロノスの体内で生きています。

別の画家が描いた、こんな絵もあります。

サターン(ピーター・ポール・ルーベンス 1636年)

こちらの方が子どもの危機感が伝わってきます。

しかしなぜ飲み込むのか?クロノスは予言を恐れていたのです。クロノスに敗れた時にウラノスが残した、「クロノスもウラノスと同じように実の息子に倒されるだろう」という予言です。

6人めの妊娠が発覚した時、レアは母ガイアに助けを求めました。

ガイアにとっては、孫たちが次々と息子に飲み込まれていくという人間界ではありえない状況です。

ガイアは次のようにアドバイスしました。「夜のうちにクレタ島へ行って出産し、家に戻り、赤ん坊ぐらいの大きさの岩を産着にくるんで抱いていなさい。岩を赤ん坊に見せかけて飲み込ませるのです。」

この作戦は成功し、クロノスは岩を赤ん坊だと思って飲み込みました。ちょろいですね。

さらに、ガイアの采配でクレタ島の妖精たちが槍(やり)で盾を叩いて物音を立て、赤ん坊の泣き声をかき消したので、クロノスは赤ん坊の存在に気付きませんでした。

ガイアの助言のおかげで赤ん坊は順調に育ちました。ウラノスを倒した時に続き、クロノスも、ガイアの知恵によって欺くことができました。

この赤ん坊が有名な「ゼウス」です。やがてゼウスは成長し、クロノスを倒し、ゼウスの時代が訪れます。

第4話 クロノスを倒したゼウス

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