ギリシャのアルゴスという都に、女神ヘラを祭る神殿がありました。
ゼウスは、この神殿のイオという巫女が気に入り、オリュンポスの館から神殿まで飛んで行って交わりました。
ゼウスがイオと交わって楽しんでいると、オリュンポスから人間界を監視していた妻ヘラが飛んできました。
ゼウスはヘラの殺気を感じ、咄嗟にイオを牝牛(めうし)に変身させました。
ヘラ:「こんな所で何をしている?まさか人間の女と浮気していたんじゃないだろうな?しかも、よりによって私の神殿で!」
ゼウス:「違う!牝牛と遊んでいただけだ!」
あくまで白を切るゼウス。ヘラは考えました。
ヘラ:「なるほど。確かにかわいらしい牝牛だ。ただし、この神殿は私の管轄だ。その牝牛は私が預かろう。」
ゼウス:「いや、それは・・・」
ヘラ:「何か問題でもあるのか?これは人間の女ではなく、ただの牝牛なんだろう?」
ヘラは牛に変えられたゼウスの愛人イオを連れ去り、アルゴスという百眼の怪物に見張りをさせました。アルゴスは、百個の眼が交代で眠るので、24時間監視が可能でした。イオは逃げ出すことができませんでした。
よくクジャクはヘラのシンボルだと言われたり、西洋絵画でヘラといっしょにクジャクが描かれていたりします。クジャクの羽の華やかさが美意識の高いヘラの人物像に合致することが理由の一つですが、羽の目玉のような特徴的な模様がアルゴスの百個の眼を彷彿させることにも由来します。もっと根本的なところでは、ゼウスの浮気を許さないヘラの監視がクジャクの羽の模様に投影されています。キリスト教絵画などで有名なルーベンスはこんな絵を描いています。
赤い服を着ているのがヘラで、手前で倒れているのが百眼の怪物アルゴスです。
ヘラは結婚や妻の地位の守護神であり、浮気を絶対に許しません。ヘラの執拗な復讐は続きます。